ANPO

『ANPO』2010 監督:リンダ・ホーグランド 会場:IFC Center, New York
劇場で着席してから映画が始まるまで、誰かとってもとっても会いたかった人に会う直前のような緊張感に見舞われた。『ANPO』は、60年に日米間で交わされた安保、闘争とそれをとりまくアートをドキュメントした映画。今現在、特にここ1、2年目立って論議されている沖縄の基地問題にも(勿論)触れられている。なぜ米軍基地が沖縄にあるのか、なぜ在日の基地がほとんど沖縄なのか、という説明には、とても時間がかかる。だいたい人とこう言う話をするときは、聞いている人に「おめえらはほっとにいつまでたっても日本にこんなことして。」という風には絶対に聞こえたくないし、アメリカ人だからってたいして罪悪感を感じさせたくないし、実際そんなことないからだ。あくまで、日本とアメリカの政府が一緒になって、沖縄をファックしているんだ、というところにたどりつく。それだけじゃなくて、日本国民からそういう事実を隠すのも上手いので、日本列島が一体になって基地に反対する運動というのは小さいんだよ。という説明もする。
『ANPO』の冒頭で、佐喜眞加代子さんがメガフォンを通して修学旅行生に話す。
日米安全保障条約って言うのは知ってた?略して『安保』もう、ここは安保だらけ。沖縄に行ったら安保が見えるのよ。」
そこに映し出される基地の全体の緑がとてもまぶしい。風が強い。映画としては沖縄問題だけに焦点をあてているのではない。監督さんの話によると、現在の時間の枠だけにはまるような映画にはしたくなかった、ということ。
もっとも主題であるのは、安保闘争の歴史。反対運動に参加していたアーティストや音楽家などが、懐かしさも交えて当時の様子を語る。彼らの作品を交えながら。アートを通した安全保障条約のしおりだ。とても主張が強くて、ここまで方向のはっきりした一組のひとたちの話を聞くのは、とても気持ちがいいし感慨深い。

近年の沖縄での基地反対運動については、『Marines Go Home』や、『Voice of Takae』などの良いドキュメンタリーが作られているのでそちらを参考にしましょう。
沖縄のことでためになるブログは、

ANPOの中でもインタビューされている真生さんが、沖縄で出会った米兵の若者のことが「かわいそうになっちゃって」、と声を詰まらせる場面が、一番心に残りました。そういう事なんだと思う。だれのためにもならないの、基地は。アートに重点が置かれている映画なので、視覚からの刺激、誰にも、すーっと真っすぐ伝わるのではないかと思う。見た人には、はああカッコいい絵や写真だった、で終わってしまうのではなく、字を読んだり、もっと知ったり、知らせたりしてほしいと思った。映画を見た直後、私がそう感じました。
音楽はNYに住んでいるNagai Shokoさんと旦那さんのTakeishi Satoshiさんが担当。二人とも私の好きなミュージシャンということで楽しみにしてたんですが、映画で聞く音楽も、すごく良いです。。。
ぜひもう一度か二度観たい。


日本でも公開中 http://www.uplink.co.jp/anpo/