Marines Go Home―感想

3日間の上映会が終わりました。すさまじい3日間だった。色んな事が頭の中を回り続けています。北海道や東京から監督さんはじめクルーの方々が来て、そして、沖縄の学生さんたちが5人、来てくれました。毎回映画の後に監督や学生さんたちを交えてディスカッションの場が設けられたのだけど、これは忘れられない経験になった。
まず、映画のこと。。。率直にいい映画だと思った。日本や韓国の地で起こっている“ショッキングな”事実を伝えているはずなのに、いとも自然に作られている感じが常にあって、そこがいいなと思った。静かな場面が頻繁に出てくる。映像の技法的なことを深く探るつもりもないんだけど、「たいしたことのない日常」の映像が、観ている者に実際そこに居る感じを引き起こす。
インタビューを受ける地元の人達に、心も身体も近づいているような感覚になる。多くの人の語っていることは、自分の生活の中で感じることや葛藤とか、他愛もない話もある。彼らはまったく、お隣のおじさんおばさん達だ。ただ気づくのが、「自分ちの裏庭を気にする」的な傲慢さとういものでは、全く無いということ。目に見えないところに目を向ける、っていう姿勢がはっきり見ることができた。これは、私にもなかなか難しいことです。


北海道の矢臼別という場所に日本一面積の大きい自衛隊の演習場がある。川瀬さんというおじさんはそのど真ん中にもともと(50年代から)住んで居て、演習場が作られた時からずっと立ち退きを拒否して、そこで農業を営んでいる。映画のはじめに彼が森の中の道をひたすらゆっくり歩くシーンがあるんだけど、そこで何かはっとさせられた。っていうのは、プロテストするっていうのは、何のためなのか、誰のためなのか、はっきりして意識していないと全く自分にとって的外れの行動でしかない、っていうことがよくある。自分から遠くにいる人たちのために(ためにという言葉はちょいといやらしいものです。)声を上げることで、これは自分の生活にどう関係してくるかを考えることは難しくもあって、とても大事なことだとこれまでも何度も書いてきたけれど、川瀬さんが歩くシーンで、自分の土地をゆっくりと一歩一歩あるいて、自分と一緒に生きている環境を確かめる、というふうなことをすごく強烈に感じた。そこにはその土地で過ごす年月や幼少の記憶というのが深く関係してくるのだろうとも思う。こういうことこそが、なんか、私のいちばん忘れていることだと思った。忘れている、というかある意味、まだ経験したことのない新しいことだ。でも、自分の育った土地と(面白いぐらい)そっくりな風景を見て、そこで暮らし、憲法の話をしてくれる川瀬さんを見て、胸をつきさされるような思いがした。


沖縄では、辺野古の海の上に、新しい米軍基地を立てる計画がされている。とにかく私は辺野古の海で文字通り身体を張ってプロテストを続ける人々を観た事が無かったので、これはショックだった。毎朝7時ごろ、(映像に出てくる限りでは)5,6人の人達が辺野古の浜からカヌーを漕いで沖のほうに出、基地建設の事前調査のために建てられた鉄でできたプラットフォームによじ登り、そこにしがみついたりすることで、作業をしようとやってくる人たちを妨害している。作業船に乗ってやってくる防衛施設局の人たちも、意地でも、というぐらいどうにか作業しようとする。この身体同士のぶつかり合いは正直、痛々しい。
後から、このカヌー隊のひとりのエツミさんというおばさんのインタビューがあるんだけど、このおばさんの話がすごく心に残った。「私達の役目は、とにかく彼らを困らせて、作業を遅らせるということ。その間に、沖縄中、日本中、世界中の心ある人たちが動いているじゃない。」という感じの言葉だった。愛の鞭みたいだった。
沖縄でも、ジュゴンの海を守るために活動している人びとが出てくる。環境を保護するというのは、いかに普遍的なことじゃなくなっていて、その代わりにひとつの“テーマ”としてみなされているのか、っていうことをすごく感じた。


韓国の梅香里(メヒャン二)にあった大きな射撃演習場は、地元の人々の反対運動が実って、2005年の8月をもって閉鎖されることになる。映画の後でのディスカッションで(NY City Collegeでだったかな)、沖縄から来た学生さんのひとりが、メヒャン二での射撃場閉鎖と住民の人たちのどんちゃん騒ぎのパーティーを見たとき「基地が無くなるってことが本当にあるんだな、」って驚きのような気持ちになった、と言っていた。生まれる前からずっと基地があって、基地の存在って言うのはほんとうに根深いものだという事実が沖縄にはあちこちにある。これこそ私には想像しがたいこと。だからこそ考えていかなければいけない課題。沖縄にいってみたい。。。
実は、私は沖縄に行きたい!っていう気持ちはそんなに強くなくて、一度は行けたらいいな、ってぐらいに思っていたんだけど、(食わず嫌いです。)今回この映画をみて本当に本当に行きたいと思っている。実際行ってみて、ほんとに海が綺麗なんだね、ということも確認してこなきゃ。。。

実は1回目の上映で初めてこの映画を観たとき、「向こう側」つまりアメリカ側、日本政府側の顔や声が全く出てきていないということが気になった。「遠くに見える集団」としてしか出てこない。そんなことを思っていたら、今監督とスタッフの人たちは、実際にアメリカで軍の側の声を聞こうと取材をしたりして、新しい映画を作っているんだそうです。そちらのほうも、楽しみです。