Children of Men

サイエンス・フィクション
メキシコ人、Alfonso Cuarónが監督のこの映画はP. D. Jamesという人の同名の本がもとになっているらしんだけど、ジョージ・オーウェルの『1984年』の世界を感じさせる映画だった。ありえないけど、ありえる世界。
簡単に書くけど、ちょっとネタバレ。
舞台は2027年のロンドンで、ロンドン以外の世界中の都市は紛争などのため破壊状態にある。ロンドンも混乱している。唯一の生き残りであるこの街では、一握りの大金持ちが平穏な生活を送る傍ら、コンクリートの壁の反対側には警備隊の列がが歩道を埋め、国外から大量に流れ込んだ不法移民の「処理」を行う。ある朝テレビで、「世界最年少の○○さんが18歳で亡くなりました」というニュースが流れる。街中がむせび泣く。どういうわけか、世界中で人間の生殖機能が停止しまっているらしく、18年間も、子供が一人も産まれていない。
なぜ、こういう状態にあるのか、なぜ世界が破壊状態にあるのか、という具体的なことは語られない。これは映画を観る人に対する問いかけだと思う。自分らの住んでいる「世界」が、大きな意味で考えるとき、これからどうなっていくのだろう。なんで世界のあちこちで紛争が起こり続けるのだろう。なんで人間の身体機能が変化して行っているのだろう。何でこんなに自然災害が起こるのだろう。誰も考えたくないような結果がこの映画で、それはとても恐ろしい。でもこの2027年のように、恐怖が当たり前になったとき、人はいちいち「なぜ」って考えるんだろうか。この映画はその、現在からみる「恐怖」を漠然と予告するような形で見せている。
印象的なのは街の風景だった。今から20年後のロンドンで、いたるところに鉄の柵やコンクリートの壁が設けられている。街中が戦場と化しており、爆音は日常茶飯事、ゴミだらけで枯れ果てたように見えるロンドンの街。でも、わかるのは、20年後も走っているだろう同じ赤い2階建てバスが走る、同じ街であるということ。
ストーリーも、多くのことは明らかにされないまま進むけど、とても面白い。18年ぶりに奇跡的に「妊娠」したある女の子(Kee)を救おうと戦うのが、主人公のTheo(クライブ・オーウェン)。戦う、といってもTheoはマッチョな性格とかではなくて、若い頃にやっていた反政府運動をあきらめて、今はべつに裕福な生活もしていない、ただの暗い男というかんじ。常にウィスキーの小瓶をポケットに携帯している。まさにウィンストン・スミスを思いおこさせるようなキャラクター、かな。
それと、Theoが銃撃を避けて逃げるとても激しいシーンがあるんだけど、かなりの長い時間をワンショットで撮っている。すごい迫力だった。これは特記してしまいます。
TheoとKeeを取り巻く人々のキャラクターが、またいい。
余計なラブシーン等も無し。いい映画だった。



※それと、邦題はトゥモロー・ワールドだそうで。日本では公開済みみたいですね。ちょっと違う雰囲気が漂ってるタイトルって気がしないでもない。