ベルリン1月21日(前編)

今日は10時ぐらいに起きた。ベッドの中で目が覚めた瞬間、えっ、ここはどこ。。。あ、ベルリン!と、不思議な感じ。昨日スーパーで買ったパン、トマト、チーズを簡単に準備して食べる。ランがオレンジジュースと思って買ったのが実はオレンジ味アイスティーだった。ちょっと、ランさん!"Nestea"ってでっかく書いてあるじゃないかよ。コーヒーも淹れた。イレナさんもちょうど居て、「昨日ご近所さんのために焼いたのよ」って言って、ケーキを一切れずつご馳走してくれた。これが、また、とても美味しい。
家を出たのは12時ごろ、まずはお目当てのひとつ、ローザ・ルクセンブルグの記念碑を観に行こう、ということでTiergartenの南側にある小さな運河を目指す。お天気はあいにく、小雨。けど、ベルリンの建築物って、なんか曇り空にとっても似合う気がするんだよなぁ。
途中で見かけたある教会:

大戦中に破壊された屋根の部分がそのまま残されている。なんていう教会なのか、結局わからずじまいだったけど。
そして運河沿いをとぼとぼ歩いていくと、あった。Rosa Luxemburgの名前が。

この運河にあるこのスポットは、ドイツ共産党を創設したばかりのローザ・ルクセンブルグが殺されて、水の中に投げ入れられたという場所。1919年のこと。運河と、灰色の空を眺めながら、過去を想像する。ベルリンって、こういう感じのする場所が多い。って、まだ2日目だけど。きっと、そんなに遠くない過去が見えるような部分が多いからだろうか。ベルリンの壁跡のこともあとで書くけど、ほんとに不思議で奇妙な雰囲気の場所が、結構ある気がする。まぁ気持ちの持ちようだけど。私は好きな雰囲気だ。
この運河沿いには、赤いお花が添えられている、名前だけの、シンプルなモニュメント。とても素敵だった。

気がついたらもう2時。この後、Kreuzbergというベルリン南西部にある地域でフレデリックとララちゃんと再び待ち合わせ。トルコ風のカフェに連れてってもらって、コーヒーとランチをとることにした。私はGozlem(たぶん)という平たい二つ折りのクレープのようなものをいただいた。中には、ほうれん草、きのこ、フェタチーズが詰まっている。3種類のソースもついてくる。うまい。うまくないはずがない。コーヒーももちろん美味しい。なにがうまいって、牛乳もうまいからコーヒーのうまさが引き立つんだね。うまいことやりますね、みんな。そこでしばらく温まったあと、二人が街案内してくれることに。しかし、とりあえず、今日は寒い。
まず向かったのが、Checkpoint Charlie。ベルリンの壁関係の典型的な名所で、西ベルリンと東ドイツを結ぶ検問所のひとつだった場所。東西を隔てる壁*1は1961年から建設が始まって、崩れたのは、89年でしたね。そう、考えてみれば、わずか18年前のこと。そうそう、なんで「Charlie」っていう名前かっていうと、英語でアルファベットをつづるとき、AはApple、B はBoy、 C はCharlie。。。と単語がつくように、ここは「チェックポイントC」だったので、ということ。それだけです。
検問所には有名な看板が立っていて、西(アメリカ占領地)側には「YOU ARE LEAVING THE AMERICAN SECTOR」(あなたはアメリカ領地を出ようとしています)って書いてあるんだけど、東(ソビエト占領)側には「YOU ARE ENTERING THE AMERICAN SECTOR」(あなたはアメリカ領地に入ろうとしています)ってなってるんですよね。。。東側を「出る」っていう言葉自体存在しなかったかのように。
これが、それです:

これはまさにベルリンの観光旅行の写真、ってかんじ。
この後も、とても親切なフレデリックとララちゃんに色々歩いて回って見せてもらったんだが、とにかく寒くてあんまり思い出せない。有名なブランデンブルグ門や、大きな教会や、Friedrich Schillerの像や。。。(シラーって、男前だったんだ。)


そのあと私達はフレデリックララと一旦別れて、ディナーに行くためにU-BahnでRosa Luxemburg Platzへ。わざわざNYから予約入れといた『暗闇レストラン』があります。唯一、ちゃんと計画しておいたお食事なんですから。(ちょっと、ここからが長くなるなー。)
この暗闇レストラン『Unschit Bar』のコンセプト、それは何も見えない暗闇の中でお食事をいただくこと。ほんっとの真っ暗闇らしい。視覚を全く使わない。すげー、面白そう!どうなるかわからないけどやってみようということで、行ってみた。閑静な通りにあるビルの門をくぐって中庭に、そのレストランはある。ドアを開けるとそこはごく普通のレストランにみえる。レセプションデスクがあって、お姉さんが予約の名前を確認してくれる。普通に電気がついている。ソファに座って待っていると、お姉さんが、メニューを持ってきてくれた。ご心配されたかもしれませんが、メニューは、前もって明るい場所で選びます。メニューはすべてコースメニューなんだけど、牛肉、ラム肉、鶏肉、魚介類、ベジタリアンの中からひとつ選ぶ、という形式。具体的な料理の名前や材料はメニューには載ってなくて、その代わりなんか、詩的な文が載っている。「なんとかの森のムニエル」とか「大西洋のそよ風」とかそういうの、あるじゃん。で、私達二人ともベジタリアンコースを選んで、赤ワインも2杯頼んだ。
注文を終えると、「もうすぐしたらウェイターが迎えに来るのでまっててね」とのこと。病院の待合室のようにしばらく座って待っていると、隣にいたグループが担当のウェイターさんに連れられて奥のほうの部屋に入っていくところだった。そうそう、ウェイターさんは全員、盲目の人たちだそうです。お客を席まで連れてってくれ、すべて面倒をみてくれるそう。そして「奥の部屋」に入ると真っ暗なので、ウェイターさんを先頭にみんな一列に、前の人の肩に手を乗せて、連なって歩いてゆきます。。。汽車ポッポです。それを隣で観ていて、笑いながらも、興奮してきた。なんかすごいことになってきたなぁ。
するとその直後に、今入って行ったグループの中の女の子が、一人で部屋から出てきた。ソファに深く座って、重そうなため息をつく。友達が心配そうに後から出てくる。ウェイターさんも出てきた。(ドイツ語で話していてよくわからないけど)どうやらこの女の子、怖くて暗闇の部屋に入れないみたい。ちょっとあたし、ぜんぜんだめ、って感じの表情がうかがえる。うーん。。。そういうこともあるよなぁ。何も見えないって、ホントに怖い。。。ありえる。なんかホントに病院の待合室みたいだ。
そんな様子を横目で見ていたら、私達の担当のウェイターさんが迎えに来てくれた。全部、英語でやってくれるそう。で、さっそく私達も汽車ポッポになって暗い部屋へ入ります。ドアを開けると、いきなりもう、真っ暗。ビビる。はじめは、外からの灯りの漏れを防ぐために作られた、ジグザグの細い通路を歩きます。そしてダイニングルームへ。突然、ほかのお客の話し声とお料理の匂いが突風のようにやってくる。すごい勢いだ。それよりも今はウェイターさんに続いて、自分達のテーブルまで歩かせてもらうのに精一杯。10mぐらい歩いたかな、やっとテーブルに着いた。ウェイターさんが、椅子を引いて一人ずつ座らせてくれる。これが、あなたの椅子ですよ、といわれて触った椅子はヌメ皮張りだった。気持ちよくて、なんかホッと落ち着く。手探りで椅子とテーブルの位置関係を確認して、やっと、座った。
とりあえず、何も見えないってことを、自分の中で消化できない。いきなりだから当たり前だけど。どこからはじめよう、えっと、まずわかるのが、私はランの向かいに座っている、ということ。テーブルは木製で、自分の前には布のランチョンマット、左側にフォーク、右側にナイフとスプーン、向かい側の上のほうにはデザート用のスプーンがある。何か、まずそういうことを一つ一つランと話しながら確認していた。
5分後ぐらいに、ウェイターさんがワインを持ってきてくれた。「○○の赤は、女性の方ですね。それでは、1時の方向にワイングラスをおきますね。」と説明が。そうか、時計の針の方向ですべてがわかるんだ。ワインが設置されて、1時の方向に恐る恐る手を伸ばすとワイングラスが。しかも脚の短いグラス。あぁ、、安心。ワイン、おいしい。
それからとにかくランと二人で喋り続ける。おしゃべりが止まらん。まず、どこにどんなものがあるのかを発見するたびにお互いに伝え、確認していく。この時点で、わたしらのテーブルは4人がけで、自分の左側は壁で、ちょっと上には窓もある、ということがわかる。(窓はもちろん黒塗り)それとお互いのワインを交換して味見しあうというところまで成功した。なんだか、とても面白くなってきた。普段全然気にしないことを、普段あまり使わない神経を使ってひとつひとつ感じていることが、すごく楽しい。たとえば、周りの人の話し声を聞きながら、部屋の大きさ、天井の高さを想像してみよう、ということになった。部屋は、そんなに大きくはないか。たぶんテーブルも、多くて10個ぐらいかな。天井は。。。全く想像がつかないので、宇宙の遥か彼方まで続いている、ってことでいいね、ということにしておいた。

そうしていると前菜が運ばれてきた。




ゲッ、ここまで書くのにバカ長くなった。続きはのちほど。。。読んで下さってありがとうございました。

*1:正確に言えば西ベルリンをぐるりと囲む壁