[腸]腹腔鏡セミナー

今日は腹腔鏡下における大腸・直腸手術の1日セミナーだった。
私は見学・雑用・写真撮影係。

私の働いてる大腸直腸外科では若い外科医のための訓練セミナーや解剖セミナーが盛んで、年に5回ぐらいやっている。そして毎回20人ぐらいの外科医や研修医が参加する。この腹腔鏡手術セミナーの目玉は、亡くなったばかりの献体された身体を使わせていただいてそれに模擬手術を施し、腹腔鏡手術のあれこれを学ぶ、というもの。日本や他の多くの国では、道徳的な概念の違いのために、こういう学習会が実現されることはまずないらしい。献体される体は(たぶん医学生レベルの)解剖学の勉強のために使われるのが主流なんだと、思う。

腹腔鏡(ふくくうきょう)手術は、腹部の、主に消化器の手術に有効な術式として90年代初めを皮切りに世界中で盛んになってきている。お腹を縦に大きく切って開腹する代わりに、お腹に5ミリから1センチぐらいの小さな穴を4-5つ開けて、その穴の一つにはお腹の中を映すための細長いカメラ、他の穴には細長い道具が差し込まれる。つかむ、はさむ、切る、縫うという用途に合わせて色々な種類の道具がある。(懐かしい話だけど、宅八郎さんの使っていた細長い“つかむ”おもちゃ、があるでしょう。それを想像してください。棒に鋏のハンドルのようなものがついていてそれをパコパコ手で動かすと、もう一方の先っぽについているハサミのようなものがパコパコ、動く。)そして手術を行う医者は、お腹に差しこまでたカメラから映される映像を通じて、同じくお腹に差し込まれたそれらの道具を動かす。
映像を映すモニターは手術台の周りに数個設置される。

腹腔鏡を使う最大の利点は、手術後の回復が早い。めちゃくちゃ早い。ということ。お腹の傷が小さいから。たとえば大腸切除した後の患者さんでも、3,4日後にはお家に帰れます。最近は、盲腸ぐらいの簡単な手術は腹腔鏡を使うのが主流なんじゃないかな。手術の翌日には退院できる。だから、多くの外科医がその技術を取り入れようとしているけれど、これは相当な量のトレーニングが必要。オペを行う部分は、手で触ることも出来ないし直接見ることもできない。すべてモニターを通して、細長い道具でちょっと距離をおいたところで手を動かさなければならない。なので、きちんと技術を身に付けないと、切除ミスや出血のリスクが高くなる。腹腔鏡の経験が未熟な外科医が手術に失敗してしまう例も少なくないらしい。新しくてとても魅力的な術式だから、やってみたい、ということなのだろうか。。。症例によっては、腹腔鏡下での手術が不可能で、開腹しなければいけなくなるケースも沢山ある。いいお医者さんというのはは、腹腔鏡でお腹の中をぐるっと見たときにまず、腹腔鏡下で出来るか出来ないかを見極める判断力を持っているお医者さん、だと言われています。

ということで、今日はそれのセミナーだったわけで、大変充実した1日だった。日本からも一人教える側の先生と、もう一人教わる側の外科医さんが参加していた。日本でも腹腔鏡はかなり一般化されているみたいですね。ただ外科医の未経験から生まれた悲しい事故が起こったことがある、と聞きました。もっと沢山の外科医さんが学べる機会が作られるべき。

私も多くのことを学びました。しかし疲れた。

ところで腹腔鏡手術、うまく説明できただろうか。。。