Sophie Scholl-The Final Days-

日曜の晩の映画はいいもんですね。観終わったら、ただ家に帰ればいいんですから。

ドイツ人監督によるナチス関係の映画が短期公開されているので観てきた。
Sophie Scholl -The Final Days-オフィシャルサイト
ナチス時代、ミュンヘンで大学に通うソフィー・ショールという女性がいた。ソフィーは、兄ハンスや仲間と共に反戦運動を起こしていた白バラ(White Rose)と呼ばれるごく小さな反政府グループの一人。ナチスが政権を握ってからは人々の言論の自由が奪われ、当時の戦争・政治批判をする者は容赦なく罰せられていた。1943年2月、(この頃はもうナチスの敗北にも目をつむれない状況になっている)ソフィーとハンスはある日、大学内でビラ配りを試みる。が、その場で目をつけられ、二人とも逮捕されてしまう。この映画は、逮捕されてから処刑されるまでの6日間(たったの!)のソフィーの様子を描いている。この映画のベースにもなっている当時の尋問調書や彼女の手記が今まで残されていたので、かなり事実に忠実な作品に仕上がっているらしい。ヒロインが悲劇に陥る、的な紋切り型の表現もあまり強くないと思う。
ソフィーは、とても信念の強い女性。彼女の発する言葉ひとつひとつの鋭さにとても驚かされる。そして、同じ考えを持つ仲間をどうやって救おうか、と努力している様子、さらにいかに自分の信念を曲げようとせずに最後まで闘っているか、という様子に私は映画の間じゅうボロボロ泣いてしまった。悔しくて悔しくてしょうがない。こんなに泣いた映画は久しぶりだった。あんまり感情的になってしまって感想を書くのが難しいんだけど。
この時代のこの場所は、政府に反するということの難しさが最悪の状況だったのだと思う。そこで仲間と共に立ち上がったソフィー、そして尋問でどうにか仲間を救おうと嘘をつき続ける彼女。これを観ていて、まず考えさせられるのは“自分ならどうするか”ということだと思う。ソフィーはわずか21歳の大学生で、婚約者がいる。ゲシュタポ側の捜査でソフィーは事実を認めざるを得ない状況に追い込まれた時、「君と君の兄さんがあのビラを作成し、配ったことを認めなさい」という尋問に「はい。そしてそれを誇りに思っています。」と、きっぱりと答える。この場面が、とても印象深かった。結局処刑されてしまうことになってからも、自分らは間違っていない、自分らのメッセージを広めなくては、という信念を曲げない。
映画の最後にさしかかるところで、彼女らの“犯罪”をめぐる裁判が開かれる。裁判官、弁護人、聴聞者とすべてナチスの人間なので、ソフィーたちの言い分を無視しながらあまりに早急に裁判が進められる様子が、ちょっと滑稽に見える。
最後にソフィーが裁判官に向かって言った言葉が、あまりにもすごかった。裁判からの資料も残されているということで、これは彼女が実際言った言葉だろう。
「貴方も、今私の立っている場所に立つことになるでしょう。」
こうして処刑されてしまう彼女の、運命の悲しさとかじゃなくて、貫き通す心の強さにすごく心を打たれる。彼女のそれがかなわなかったことに対する悔しさが、自分ならどうするのか、と自問させてくれる。
今見て考えることができる、とても意味のある作品だと思う。
ソフィーを演じたJulia Jentsch(ユーリア・イェンチ?)さん、本当にすごかった。
映画が終わってクレジットが流れ終わってからも、赤子のようにぅえぅえっと泣き続けてしまって、とても恥ずかしかったのでシアターをささっと出て、ランさんとなーんにも喋らずにクスクスっと笑いが出るまでしばらーく歩いた。泣く、という形でこんなにも感情あらわにしてみると、この映画のどの部分をどう感じたのか、ぼやけてちょっとわからなくなってしまう。自分でも、こういう映画は冷静に観れるほうだ、と思っていたのだけど。
NYではFilm ForumとBAMで上映中。